第9回 GVFセミナー EUの挑戦 国民国家を超えた入国管理の成否~シェンゲン条約と欧州統合」

イミケンとして初のEUのセミナーとなります。どうぞお誘い合わせの上、ご参加ください。

◆ 開催日 12 月3 日(月) 午後18:00~20 :30

◆ タイトル 「EUの挑戦 国民国家を超えた入国管理の成否~シェンゲン条約と欧州統合」

◆ 講師  上智大学法学部准教授 岡部みどり

◆ 受講料  3,500円(会員2,500円)

◆ 申し込み先 info_gvf@immigration-law.jp

◆ 会場: リガーレ日本橋人形町アネックス3F < アクセスMAP /  印刷用詳細地図 >

◆   セミナーレポート

イミケン初のEU地域に関するレクチャーでとても興味深い内容でした。経済危機、そしてアラブの春とも関連する問題はまだまだ山積みです。

 

 

 

アドバイザーの足利弥生さんによるレポートです⇒ブログ

<アドバイザーの浅川晃広先生によるレポート>

今回の研究会では、上智大学の岡部みどり先生より、EUの出入国管理体制の中で重要な意味を占める「シェンゲン条約」を中心として、ご報告いただいた。加盟国間における加盟国民の出入国管理を撤廃するという「シェンゲン体制」は、極めて特徴的なものである。報告の中で、実は、この体制が、人の移動の活発化による相当に予見可能な経済効果を念頭におおいていたものというより、欧州統合上の象徴的文脈でなされたと指摘された点は、非常に興味深いものであった。

さらに、私もそうであるし、他の参加者もそうであったと思うが、最大の問題関心は、今後の「シェンゲン体制」のあり方であった。このことに関連して、「アラブの春」後の北アフリカからの庇護申請者の大量流入に伴い、上陸した国からの移動を妨げるために、独・仏のイニシアチブで「一時的に」シェンゲン体制が停止、すなわち、加盟国間の出入国管理が再開されるということが報告された。

このことは、加盟国間の出入国管理が撤廃された結果、本来の目的国とは別の国にあえて不法入国するというインセンティブが生まれてしまったとも考えられる。すなわち、「シェンゲン体制」がなければ、独や仏への入国を目当てとしたイタリアへの大量流入はありえなかったかもしれない。この意味で、確かにEU内での出入国管理の撤廃は実現したものの、EU外との出入国管理が、一部の、非加盟国と隣接する国に重くのしかかるという現状があるのかもしれない。

なお、岡部先生より、今後のシェンゲン体制の行方としては、完全にそれを撤廃しようとする動きがあるのではなく、あくまでも状況によって停止することもある、といった柔軟な対応がなされている、との報告がなされた。欧州における出入国管理政策の動向は、世界の中でも、いうまでもなく重要なものであり、これに関する知見をご提供いただいた岡部先生にお礼申し上げたい。