2016年7月28日「詳説 入管法の実務(第3回)」の様子

7月28日(木)に「詳説 入管法の実務(第3回)」が東京のTKP新橋内幸町ビジネスセンター(東京都港区西新橋1-1-15 物産ビル別館6F)で開催されました。会場は、前回に引き続き68名の皆様にご出席いただきました。

講師は前回に引き続き、弁護士の山脇康嗣先生です。

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今回は10回シリーズの第3回目。冒頭、次のとおり第2回分の積み残し分の解説がありました。
1 「裁量の範囲」について、例えば永住申請については裁量の範囲が少ないことなど具体的な例を示しつつ、条文構造等から、裁量の範囲を正確に理解し、依頼者の利益のために実務を行う必要性を強調されました。
2 「在留資格変更許可申請」については、短期滞在の特殊性、すなわち「やむを得ない場合」にしか認められない点について、身分系はさることながら、「告示定住」の場合も認められていることにつき、また、技能実習制度については原則として変更申請が認められていないことにつき注意喚起がなされました。

その後、第3回目のレジュメ及び添付資料について解説が加えられました(「資格外活動」「再入国」「在留資格取消」)。
1 まず、始めに第2回目以降、入管法の重要部分に入っていくにあたって、「入管法上の各制度をただ覚えるのではなく、類似の制度を比較しながら、要件効果の異同を抑えることによってさらに深い理解ができること」の重要性について説明があり、次のような具体例を挙げられました。
(1) 「入国のための条件」につき、「通常類型(入管法7条)」「再入国許可取得者」「特別永住者」の順番で要件が緩和されていること
(2) 「在留資格『短期滞在』の更新」につき、査証免除国の方か、長期、短期査証免除の別などによって対応が異なること
(3) 「再入国許可」につき、通常再入国許可とみなし再入国許可があるが、要件が異なること
(4) 「資格外活動許可」につき、「包括許可」「個別許可」の違いがあること
2 次にレジュメに沿って次のとおり解説が加えられました。
「資格外活動許可」について、「不法就労助長罪」の見直しが行われた点、特に「過失がない場合を除き処罰を免れない規程(入管法73条の2第2項)がもうけられたことにより、過失の立証ができなかった場合に不法就労助長罪が成立する危険性が指摘されました。また、入管法70条1項4号、24条4号イにいう「専ら」「明らか」の判断については、裁判例が「進化」していること、関連裁判例を十分に理解する重要性があることが指摘されています。
3 また、資格外活動許可については、「規制対象に係る注意点」に関連して、在留資格「短期滞在」によって認められる活動と、資格外活動となる分水嶺についての確認がありました。実務的にも重要なポイントであり、依頼者に的確な説明が求められる点です。
4 資格外活動は、その内容、就労が行われる場所などについても注意を要することの確認がありました。
5 「再入国許可」については、要件の確認、裁判例の活用方法についての説明がありました。とりわけ、再入国許可申請をおこなう必要がある重要な場面として「退去強制事由には該当しないが、上陸拒否事由に該当する者」が出国し、再入国することを考えている場合、すなわち刑事事件で執行猶予を受けている者が、出国して再入国する場合等において重要性があることが強調されました。この点、誤った指摘をすること(例えば「退去強制事由には該当しないから安心していい。好きな時期に出国して帰国できる」等)をしないように指摘がなされました。
6 最後に、最近の入管実務においても増えている「在留資格取消制度」の解説が行われました。在留資格取消制度(入管法22条の4)については、その「要件の異同」や、「在留資格取消手続きが開始された依頼者に対する弁護士、行政書士の対応方法について」解説が加えられました。
7 在留資格取消制度については、「定住者告示該当性を偽った場合の在留資格「定住者」の取消について」在留審査要領の該当箇所についてその内容について指摘が加えられています。

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なお、時間の関係上、講義の最後の質問は1名に限定させていただくこととなりましたが、実務家ならではの重要応答となりました。

なお、今回レジュメ中、在留資格取消制度部分に積み残しがありましたので、、次回(8/10)でも使用される予定です。次回出席予定の方はご持参下さい。

記事:木島祥登